3秒後、きみと恋がはじまる。



「……まあ、桃ちゃんのそういうところ、俺は結構好きだけどね」


「…ありがと、郁人くん」



郁人くんは、眉を下げて、優しく笑った。

「本気なんだけどな」なんて小さく呟いた彼の声は、私には届かなかった。




その後、特進科と会うことはなくて。

私はそれなりに、京都の旅行を楽しんだ。

お寺とか歴史とかあんまりよく分からないけれど、なんだか神聖な気分になったし、抹茶のお菓子は美味しいし。




「は〜〜!楽しかったね」



旅館に着いて、同じ部屋の6人分並んだ布団の上に倒れこむ。


「布団硬い〜〜」
「仕方ないよ、きっと安い旅館だもん」


机に置いてあったお菓子なんかを食べながらみんなでくつろいでいると、ドアがノックされてから開いた。



「もーもちゃん」

「郁人くん、どうしたの?」



郁人くんも、今日割とたくさん一緒にいたせいで、クラスの女子にも馴染んでしまっている。


ユリちゃん、スミレちゃん、郁人くん、なんて呼び合っているし、同じ部屋の他の女の子ともいつのまにか仲良くなっている。

さすが、コミュニケーション能力が高いなぁ。



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