3秒後、きみと恋がはじまる。
そして私と郁人くんも出発して、薄暗い竹林を歩いて行く。
「いやぁ、やっぱり小悪魔だね。瀬川ちゃん」
歩きながらため息をつく郁人くんに、少し後ろからついていく。
「苦手なら、しょうがない、よ」
「…本当にそう思ってる?」
「おもっ、て…」
思ってるよ、って、言えなくて。
代わりにじわり、と涙が浮かんだ。
「せ、せっかく私が茜くんとペアだったのに、って、思ってる……」
どうしてだろう。
どうして郁人くんは、私の本音を探し出して。
そして私はどうして郁人くんの前だと、本当のことを言ってしまうんだろう。
自分のことすら、騙せてたのに。
「仕方ないよ」って言い聞かせてたのに。
「うん、そうだよね。悔しいよね」
「私が茜くんとペアだったから、急にああいうこと言ったのかな、とか、思っちゃう自分が嫌……」
ぽろり、と頬を伝った涙を、郁人くんは見ないふりして聞いてくれる。
「そんなの思って当たり前でしょ。
俺だったら瀬川ちゃんのこと嫌いになるね」
「でも、雪音ちゃん、優しく話しかけてくれるし…」
「そういうところがお人好しなんだよ、桃ちゃん」