3秒後、きみと恋がはじまる。
「ねえ、桃ちゃん」
「え…?」
「……有村なんかやめて、俺にしない?」
「またまたぁ……いいって、そんな風に慰めてくれなくて」
へらりと笑って返したのに。
郁人くんの目は、見たことないくらい真剣に私の目を見つめていた。
「本気だよ」
「え、」
「桃ちゃんの不器用でお人好しなところ、もう結構好きになっちゃった」
ドキン、と胸が跳ねて。
頬に身体中の熱が集まったみたいに熱くなった。
「え、あの……」
「いいよ、返事はくれなくて。
でもちょっとでも、俺のことも見てくれたら嬉しい」
戸惑う私に、郁人くんはふっと笑って。
「ほら、早く写真撮って帰ろう」なんて、すぐにいつもの調子に戻って歩き始めた。
私はどうしたらいいのか分からなくて、ドキドキしている間に集合場所だった旅館の裏に戻って来て。
……どうしよう、まだドキドキしてる。