3秒後、きみと恋がはじまる。



「桃ちゃん、おかえり」



にっこり笑って、当然のように茜くんの隣に座っていた雪音ちゃんに声を掛けられて、私はまた笑ってみせる。


すぐに笑ってごまかすの、悪いところだよなぁ。




「桃ちゃんのペア、長かったね。
なんか最近、櫻木くんと仲良くない?
何かあったのー?」



茜くんの前で、そんなこと言わなくてもいいのに。
私が茜くんのこと好きなの、知ってるくせに。



だけど茜くんは興味なさそうなポーカーフェイス。

分かってるよ、私と郁人くんがどうなろうが、茜くんには関係ないことくらい。






「…そっちも、最近仲良しだね」



なんだかモヤモヤして、無性にイライラして。
言いたくもないことも言ってしまった。




「えー、そうかなぁ」なんて嬉しそうな顔をする雪音ちゃんに、心の中に黒いものが広がって行く。





「…私、そろそろ行くね」





少し冷たく言って背を向けてから、後悔した。


酷いやつだって、思われただろうか。
雪音ちゃんは本当に、なんの悪気もなかったのかもしれないのに。

なんだか自分が嫌で、性格が悪くて。

茜くんの目は、見れなかった。




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