3秒後、きみと恋がはじまる。



「ねえ桃、大丈夫なの?
有村くんとは全然喋ってないし、瀬川さんはめちゃくちゃ積極的じゃん」


修学旅行3日目、つまり最終日。
自由行動をしながら、ユリとスミレが心配そうに私の顔を覗き込む。


2日目は、全然茜くんと会えなくて。
私は所々で一方的に見かけていたけれど、どれも雪音ちゃんと一緒で話しかけられなかった。



今までだったら、話しかけられたのに。
なんだか急に、臆病になってしまったみたいだ。




「どうしよう…諦めた方がいいのかな」





だけど、茜くんを、好きでいるのをやめるって。

そう思っただけで私の目には、じわりと涙が浮かんでくる。



遠くの方で笑いあっている、茜くんと雪音ちゃんを見るたびに、息がしづらくて。苦しくて。




…知らなかった。


片想いが、こんなに苦しいなんて。
茜くんが、こんなに遠いなんて。




< 161 / 265 >

この作品をシェア

pagetop