3秒後、きみと恋がはじまる。


「……ほら、駅戻るぞ」



茜くんは、自然に私の手を握って。
私は驚いて、茜くんの顔を見上げる。



「また迷子になったら困るだろ」



私の方を振り返らないで。
私の手を握って、早足で坂道を下りながら。

茜くんがどんな表情をしていたのか、私は知らない。



迷いもせずに、駅まで進んで。

それでも私が駆け足になると、ちゃんと気付いてゆっくり歩いてくれる。



さっきまで最悪の修学旅行だって思ってたのに、

茜くんのおかげでこんなにドキドキしてるなんて。


やっぱり茜くんは、魔法使いみたいだ。



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