3秒後、きみと恋がはじまる。



「ねえ茜くん、これすごく美味しいの!
コンビニの新作チョコなんだけどね…」


私がバッグの中から出した、コンビニの新作のチョコレートを一粒あげると、「甘いね」なんて、当たり前な感想を返してくれた。




茜くんは、素っ気ないけれど。
冷たいように見えて、ちゃんと私の話を聞いてくれている。

そういうところ、すごく優しいと思うんだ。




「じゃあ、私そろそろ帰るね。
茜くんはまだ残って勉強するんだよね?頑張って」


「うん」



言葉はそれだけだったけれど。
ひらりと手を振ってくれた茜くんに、自然と頬が緩む。


なんだか、私の気のせいかもしれないけれど。
茜くん、優しくなったような気がする。


手を振ってくれることなんて、今までなかったから。




少しずつ、茜くんとの距離が近づいているんじゃないかって。

修学旅行以来、私は少し期待していまっている。


あの日「桃」って呼んでくれた声が。
走って、助けにきてくれたきみが。
私の手を握った、きみの温度が。


頭から離れなくて、思い出すだけで胸がきゅんとときめく。


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