3秒後、きみと恋がはじまる。








「ねえ、いいの?このままで」



その日から私は、茜くんのクラスに行かなくなった。

ユリやスミレが私のことを心配してくれるけれど、「いいの!」と分かりやすい作り笑いをしてしまう。
2人は困った顔をして、眉を下げる。


……ごめんね、心配かけて。




分かっていたことだけれど、私から会いに行かなかったら茜くんとは会えない。


一方的に、廊下の向こう側に見かけたり。
体育をやっているのを、教室の窓から見つめたり。


そんなことはあるけれど、言葉を交わすことも、目が合うこともない。


私が頑張らないとこの関係すらも終わってしまうなんて、わかっていたことなのに。


それなのに、どこかで、茜くんが話しかけてくれるんじゃないかって。

そう期待してしまっている自分が嫌いだ。




「雪音ちゃんと付き合っちゃってもいいの?
雪音ちゃん、アピールしてるって噂だよ」


「……それ、は」



だってもう、たくさん頑張ったもん。

それでも茜くんは私を好きにならなかったって、ただそれだけのことで。


3秒間、見つめ合ったあの日を、なかったことにすればいい。


ただ遠くから見つめていただけの、あの頃に戻っただけじゃないか。




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