3秒後、きみと恋がはじまる。



「……あれ。桃ちゃん、今帰り?」

「郁人くん!うん、帰るところだよ」



ユリもスミレも用事があるらしいので、1人で帰ろうと階段を降りているところで、郁人くんに会った。


「一緒に帰ろうよ」

「うん、いいよ」




郁人くんは修学旅行以来、ちょくちょく話しかけてくれるようになった。

あの告白はなかったみたいに、いつも通り喋ってくれるけれど、私は少しどうしたらいいか戸惑っている。



2人で、他愛のない話をしながら昇降口に向かった。


昨日のお笑い番組が面白かったとか、今日の抜き打ちテストが大変だったとか、そんなくだらない話を楽しそうに聞いてくれる。





「あれ、三好ちゃん」




階段を曲がったところで、ばったりと会ってしまったのは、茜くんと雪音ちゃん、そして要くん。


久しぶりに近くで見た茜くんに、無意識のうちに跳ねる心臓が憎い。



「あ……久しぶり」




要くんが手を振ってくれたから、へらりと笑って手を振り返す。

茜くんは、なにも言わない。




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