3秒後、きみと恋がはじまる。
私が早足になると、さりげなく歩幅を合わせてくれる優しさが好き。
鳴ってしまった私のお腹に、くくっと笑う顔が好き。
『青のりついてたら笑ってやるよ』なんて意地悪で、私が気にしないようにしてくれる、不器用な優しさが好き。
ああ、私、こんなにも。
茜くんのこと、好きになっちゃったんだ……。
「……郁人くん」
「ん?」
駅に向かって、歩いている途中。
突然立ち止まった私に、郁人くんも歩みを止めて振り返る。
郁人くんは、格好良くて。
優しくて、女の子の扱いがうまくて。
私の味方を、してくれて。
私にはもったいないくらい素敵な人だけど。
このまま茜くんを好きでいたって、望みなんて1ミリも残ってないけれど。
それでも、私。
「……ごめん、私、どうしても茜くんが好き」
郁人くんは、少し目を見張って。
それから眉を下げて、寂しそうに笑った。