3秒後、きみと恋がはじまる。
「……うん、そっか」
「いっぱい、優しくてしくれたのに、ごめんなさい……」
「いいよ。俺、そういう一途な桃ちゃんのこと好きになったんだから」
ごめんね、郁人くん。
いっぱいいっぱい優しくしてくれて、慰めてくれたのに、ごめんね。
こんな叶わない恋のことばっかり考えて、ごめんね。
「あーあ。俺、いろんな女の子と遊んでるのに、こんな誰かを独り占めしたいと思ったの初めてだわ」
はは、と笑う郁人くん。
私は何も言えずに俯く。
「ありがとね。
みんなの言う『恋』ってやつ、やっと少しだけわかった気がする」
「こちらこそ、ありがとう……っ」
「俺が本気になる前でよかったね。
……ごめん、駅まで送ってあげられないや。
この辺ブラブラして帰る」
「うん、わかった。今日は本当にありがとう」
「ん、ばいばい。桃ちゃん。
有村のこと、頑張ってよ」
「うん。バイバイ、郁人くん」
郁人くんを残して、電車に乗る。
窓に映った夜の街を見て、目を細めた。