3秒後、きみと恋がはじまる。
「あれ、桃ちゃん?」
「わ、郁人くん!」
階段を慌てて駆け下りていると、向こうから上って来た郁人くんに声をかけられて、急いで立ち止まる。
郁人くんにはデートをして以来会っていなかったから、随分と久しぶりだ。
「久しぶりだね、桃ちゃん」
「うん…郁人くん元気だった?」
「まあね。そんな急いでどうしたの?」
「あ……実は、ノート集めて来いって言われたんだけど。
でもバスケ部の田中くんのノートだけ集められてなくて、取りに行こうとしてて……」
「この後何か用事でもあるの?」
あまりに急いで走っていたからか、不思議そうな顔をする郁人くん。
……こんなこと、郁人くんに言うのはデリカシーがないかもしれないし…。
「なに、もしかして気使ってる?
どうせ有村のことでしょ、分かってるって」
ば、ばれてる……。
「…実は、茜くんに誕生日ケーキを渡したいんだけど…早くしないと帰っちゃうかなって…」