3秒後、きみと恋がはじまる。
「茜く……っ、」
ガラッ、と勢いよくドアを開けると、茜くんのクラスには誰もいなくて。
静かな教室に、アナログ時計の秒針の音だけが響いていた。
…間に合わなかった。
ふと、鞄の中に入れていたスマホがメッセージを受信しているのに気づいて、慌ててメッセージアプリを開く。
要くんからだ……。
『ごめん、茜、塾だから帰っちゃうみたい
。途中まで引き止めようとしたんだけど授業始まっちゃうみたいで……。
ここの塾だから、もしあれだったら終わりの時間あたりに行けば会えるかも?』
そんなメッセージの後に、茜くんの通っている塾のマップが送られていた。
私は急いで『ありがとう!』と返信をして、学校を出る。
どうしても、今日渡したいんだ。
茜くんが教えてくれた誕生日は、今日だから。
茜くんは、覚えてないとしても。
ただの、デタラメだったとしても。
それでも、私にとっては大切な日だから……。