3秒後、きみと恋がはじまる。
茜くんは中学生の頃に、誕生日を誰が先にお祝いするかで騒動が起きて以来、自分の誕生日を教えてくれなくなったらしい。
その話の通り、同じクラスのミカちゃんは8月って聞いたらしいし、B組のナナちゃんは11月って聞いた。
サツキ先輩は2月って聞いたし、後輩のランちゃんは9月って聞いたらしい。
そのうちの誰かは本当のことを聞いているのか、それとも全部嘘なのか。
茜くんの本当の誕生日は、誰も知らない。
でも、それでも。
知りたいよね、好きな人の誕生日。
デタラメを言われるって分かっていても、それでも私だって聞きたい。
聞いた誕生日が嘘だろうと本当だろうと、私はその日に祝ってやるからな!
と強い意気込みを持って、私は今日も特進科の校舎に向かう。
だってもう、相当好きなのだ。
冷たくて、女の子が嫌いで、私に興味がない彼のことが。
それでも駅のホームで私を助けてくれて、さりげなく一緒に電車が来るのを待ってくれていた彼のことが。
もう、随分、大好きなのだ。