3秒後、きみと恋がはじまる。
冷たいところが、好き。
ぶっきらぼうな優しさが、好き。
面倒くさそうに呆れた表情が、好き。
たまに見せる、意地悪な表情が、好き。
眉を下げて困ったように笑う、その顔が、好き。
全部、全部。
きみのことなら全部が、好き。
あの頃も、初めて目が合ったあの日も。
きみはいつだって、私に魔法をかけてくれる。
「……負けたわ」
「え…?」
「久しぶりに再会したのに、全然覚えてねえし、うるさいし、しつこいし、面倒くさいし、アホだし、絶対好きにならないと思ったけど」
「ひ、ひどい…」
泣きそうな私に、茜くんは、目を細めて。
とびっきり愛おしい、優しい顔をして。
「俺の負けだな」
「それ、って」
「…俺の彼女になる?」
「っ、なる……!」
茜くんに、ぎゅうっと抱きついたら。
思ったよりも筋肉質なその腕は、私の背中にまわった。
大好きなきみの体温の中で、大好きなきみの声を1番近くで聞いて。
「桃」
って囁いてくれたきみを、私は一生忘れないよ。