3秒後、きみと恋がはじまる。
「王子役のやつが風邪引いて来れないらしくて、代役になった」
「ええ……それはやっぱり格好いいから?」
「それは知らねーよ」
でも、まあ、茜くんなんて学校で1.2を争うくらい格好いいし、頭もいいし、目立つし。
そもそもどうして最初から王子様役じゃなかったんだろうっていうくらい、王子様に適任だけれど。
「セリフとか覚えてるの?」
「王子は最後に出るだけだからセリフ少ないんだって」
……ああ、確かにそうかも。
最後に…最後、に。
キス、するだけだもんね。
本当にするわけじゃ、ないだろうけれど。
振りだけだって、わかっているけれど。
それでも茜くんと雪音ちゃんがキスするところなんて、見たくなさすぎる。
「……キス、するんだね」
見るからにしょんぼりと肩を落とした私に、茜くんは「本当にするわけじゃないだろ」ともっともなことを言う。
わかってるよ、わかってるけど。