3秒後、きみと恋がはじまる。
「……初めての、キスだね」
なんだか恥ずかしくなって、目をそらしてそう言ったら、茜くんは「あー、」と気まずそうに視線を逸らした。
「……初めてじゃ、ないけどね」
「え……?」
意味がわからない。
だって私、茜くんとキスしたことなんてない…。
意味がわからなくて茜くんを見つめ返すと、茜くんは髪をくしゃりとかきあげて、小さな声で。
「……修学旅行の、電車で」
「修学旅行?」
私が迷子になって、茜くんが助けてくれた、修学旅行の電車。
寝てしまった私は、どんな夢を見てたかっていうと。
茜くんと初めてのキスをする、そんな幸せな夢を見ていたわけだけれど。
「……ええ!?夢じゃなかったの!?」
「夢?」
「あ、いや、えっと……え、茜くん、私にキスしたの?」
「……ごめん」