3秒後、きみと恋がはじまる。


急に頭上に黒い傘が差し出されて、降ってくるはずの雨は身体に当たらなくて。


驚いて振り返ったら、そうしたら。



「茜、くん」

「こんな雨の中、傘も差さないなんてバカじゃないの」



眉をひそめて、信じられない、という表情をしている茜くんに、胸がぎゅうっと締め付ける。



「風邪ひいたらどうするんだよ、気をつけろよ」



なんだか怒っているみたいな茜くん。
どうして…?




「私、丈夫だから風邪ひかないよ!」

「丈夫じゃねえだろ」




茜くんの、何か知ってるみたいな言葉に首をひねる。
どうして、そんなこと言うんだろう。

私のこと、全然知らないはずなのに。




「ほら、行くぞ」



当たり前のように私を傘に入れて隣を歩き出す茜くんに、心臓がドキンドキンとうるさい。

今までで1番近い距離に、息が詰まりそうだ。



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