3秒後、きみと恋がはじまる。
緊張してしまって茜くんから少し離れると、茜くんは不機嫌な顔で私を抱き寄せた。
偶然か意図的か、さりげなく車道側を歩いてくれている茜くんに。
抱き寄せられて密着した、右腕に。
抱き寄せる時に触れた、左腕に。
身体中の血液が逆流するみたいに熱くて、緊張して、胸が苦しくて。
茜くんの黒くて大きな傘は、世界から私たち2人だけを切り取ったみたい。
まるで2人きりの世界みたいだ。
傘に当たる雨は、軽やかな音を立てて弾けては、地面に落ちてアスファルトを濡らす。
……どうしてだろう。
茜くんに話したいこと、たくさんあったのに。
茜くんにあったら言いたいこと、たくさん考えてたのに。
ドキドキして、頭の中が真っ白で、全部飛んじゃった。
ただ、ちらりと右側に目を向ければ、大好きな彼の綺麗な横顔があって。
「…なに」
私がじっと見つめていたら、首をかしげる彼に。
私は幸せに包まれて、空から降る雨すらも甘くてキラキラのジェリービーンズみたいに見えてしまうよ。