3秒後、きみと恋がはじまる。
「…送っていくよ」
茜くんと私の乗る電車が反対方向だということは、前回駅で助けてくれた時にわかった。
…はず、なんだけれど。
「え?」
自分の乗るはずの電車じゃなくて、私の乗る電車の列に並ぶ茜くん。
驚いて目を見張る。
「駅から家まで、また濡れるだろ」
「え、悪いよ!駅から家まで近いから、走って帰れる…」
「いいから。もっと気を付けろよ」
ちょうどホームに入ってきた電車に、本当に茜くんも乗ってしまった。
混んでいる帰宅ラッシュの電車の中で、後ろから押されて茜くんに密着してしまう。
心臓がこれ以上ないくらいドキドキしていて、ぎゅっと目を瞑る。
「あ、茜くん」
「なに」
「もしかして、喘息だったって言ったこと、心配してるの?
大丈夫だよ、今はなんともないから…」
「はいはい、わかったって」
茜くんを押さないように、必死に体制を保っている私の肩を、茜くんはぐっと引き寄せて。
わ、と小さな声を漏らして、私は茜くんの胸に寄りかかってしまった。