3秒後、きみと恋がはじまる。
「…行くぞ」
茜くんは私を庇うように、少し前を歩きながら外に出る。
おじさんは私と茜くんを見て、悔しそうに舌打ちをして。
それからしばらくこっちを見ていたけれど、諦めたように背を向けて去って行った。
「あ、ありがとう…!」
「ん」
もうおじさんは戻って行って、姿は見えなくなったけれど、茜くんは私の隣を歩いている。
「あ、もう大丈夫だよ。
わざわざ呼び出しちゃって本当にごめん…」
「いいって。ここまで来たら家まで送るから」
ぶっきらぼうな、声で。
それでもとびきり優しい言葉で。
さっきまで怖がっていたくせに、私の胸はキュンキュンうるさい。
街灯だけが私たちを照らす、真っ暗な夜の道。
少し冷たい夜の風が、私たちの頬をそっと撫でる。
ちらりと隣を見上げると、目があって。
なに、と小さな声で聞いた彼に、ありがとう、ってお礼を言って。
いつも、メッセージの返信なんてくれないくせに。
面倒くさがりなくせに。
それなのにこんな時は、すぐに助けに来てくれるなんて。
真っ暗闇の夜の中、きみは突然現れたヒーローみたいだった。