3秒後、きみと恋がはじまる。
「……あ、茜くんだ…」
特進科の校舎。茜くんのクラス。
何人かの友達たちと話している茜くんを見つけて、心が少しだけふわりと明るくなった。
柔らかそうな黒い髪も、ブルーのシャツも、紺色の少し大きめのカーディガンも、好き。
……だけど。
5人くらいで話している男女。
隣にいる女の子は、もしかして。
「もう、雪音ちゃん面白い!」
「えー、そうかな!?」
「ユキネちゃん」と呼ばれた女の子は、隣にいる茜くんを少し上目遣いで見上げて、可愛らしく笑っている。
あの子が転校生、なのかな。
サラサラでツヤツヤの黒髪ボブ。
真っ白な肌に赤い口紅。
整った、大人っぽくて綺麗な顔立ち。
白雪姫みたい…。
初めて見るから、きっとあの子が転校生なんだろう。
本当に、美人だ…。
…ていうか茜くんって、女の子の前でも笑うんだ。
なんだか楽しそうな雰囲気に。
茜くんを見上げる、彼女の嬉しそうな顔に。
ズキン、と胸が痛んだ。
私には、少しだけ素を出してくれているんじゃないかって。
夜に助けに来てくれるくらいには、私のこと特別に思ってくれているんじゃないかって。
……私いつの間にか、期待してたんだなぁ。