3秒後、きみと恋がはじまる。
おかしいなぁ。
茜くんといると、いつも楽しいのに。
今日は、どんどん苦しくなる。
思ってもないことばかり言ってしまう。
本当は、茜くんともっと喋りたかったし。
茜くんに勉強教えてもらいたかったし。
私が「一緒に勉強していい?」って聞いた時は嫌だって言ったくせに、他の女の子とは勉強するなんて、悔しいし。
……それでもそんなこと、言えないのは。
あまりにも可愛いあの子に、笑いかけてる茜くんを見てしまったからだろう。
じわり、と目に涙が浮かんで。
留年かもしれないって思った時よりずっと、悲しいし寂しくて。
もう帰ろうとして背を向けた、瞬間。
「……お前、1人で帰るの」
ぶっきらぼうで冷たい、私の大好きな声がして。
「…え、うん」
背を向けたまま答えたのは、泣きそうな顔を見られたくなかったから。