3秒後、きみと恋がはじまる。



おかしいなぁ。


茜くんといると、いつも楽しいのに。

今日は、どんどん苦しくなる。


思ってもないことばかり言ってしまう。



本当は、茜くんともっと喋りたかったし。
茜くんに勉強教えてもらいたかったし。


私が「一緒に勉強していい?」って聞いた時は嫌だって言ったくせに、他の女の子とは勉強するなんて、悔しいし。




……それでもそんなこと、言えないのは。
あまりにも可愛いあの子に、笑いかけてる茜くんを見てしまったからだろう。


じわり、と目に涙が浮かんで。

留年かもしれないって思った時よりずっと、悲しいし寂しくて。

もう帰ろうとして背を向けた、瞬間。







「……お前、1人で帰るの」



ぶっきらぼうで冷たい、私の大好きな声がして。



「…え、うん」



背を向けたまま答えたのは、泣きそうな顔を見られたくなかったから。



< 58 / 265 >

この作品をシェア

pagetop