3秒後、きみと恋がはじまる。
……なに、言ってるんだろう、私。
初めてちゃんと話すのに。
有村くんはきっと入学式の日のことなんて覚えていないだろうから、初対面といってもいいくらいなのに。
しかも有村くんは、女の子が嫌いで、どんなに可愛い女の子がアピールしても面倒くさそうにかわすだけだって、知ってるのに。
それなのに、それなのに。
たった3秒で、その魔法で、恋に落ちてしまうだなんて。
「…急に、ごめんなさい…」
驚いた顔をしたまま、何も言わない有村くんに耐えられなくなって、小さな声で謝る。
「……俺が誰だか分かってる?」
「え……?」
質問の意図が分からずに、一度視線を外して、また彼を見つめる。
やっぱりドクンと跳ねる心臓は、好きって気持ちを私に教えてくれているみたいだ。
「…有村、茜くん。特進科の2年生。
後は…あんまり、よく知らないけど、でも」
「……あ、そう」
目を伏せて、冷たい声で。
私にノートを渡して、それから私の横を通り過ぎようとする彼。
なんて答えたら、正解だったんだろう。