3秒後、きみと恋がはじまる。
「茜くん!」
誰もいない放課後の廊下。
少し小さくなった背中に、大きな声で叫んだら。
面倒くさそうにゆっくりと、キラキラ眩しい彼が振り返る。
「…って、呼んでもいい?」
「……勝手にすれば」
拒否されなかったことに嬉しくなって、思わず頬が緩む。
「私、三好 桃です。よろしくね!」
「…聞いてねえよ」
彼はやっぱり、噂通り冷たい王子様で。
だけどなんでだろう。
こんなにドキドキするのは。
彼のこと、もっと知りたい。
彼にもっと、私のことを知ってほしい。
階段を降りて行ってしまった彼を見送って、よーし、と意気込む。
茜くん、と小さな声でつぶやいたら、その優しい響きにまた胸が高鳴った。