3秒後、きみと恋がはじまる。
「…で、何しに来たの」
私がいつまでも茜くんのそばに立っているから、茜くんは不審そうな顔をして私を見つめる。
…何を、しに来たかっていうと。
大人っぽくなった私を、茜くんに見せようと思って来たわけなんだけれど。
そもそも気付いてさえくれないなんて、ちょっとショックだなぁ。
……まあ、茜くんらしいと言えばそうだけれど。
「あ……じゃあ、戻る、ね」
これ以上、何かすることもなくて。
あんまりにも、茜くんが、不機嫌だから。
迷惑なんだなって思って、少し寂しくなってしまった。
とぼとぼと教室を出て、廊下を歩く。
「もーもちゃん」
と、隣に駆け寄って来たのは、マナちゃんから借りたCDを片手に持った郁人くんで。
「俺も普通科戻るから一緒に戻ろう」
「あ、うん…」
「なに、どうかしたの?元気なくない?」
「……私、どんどん欲張りになってるかも」
ぽろり、とこぼれた言葉に、改めて実感した。
今までは、見てられるだけでよかったのに。
話せるだけで、幸せだったのに。
可愛いと思われたいだなんて、なんて贅沢なんだ。