3秒後、きみと恋がはじまる。
「…じゃあ、俺は先に帰るわ!」
何かを察したように、にやり、と楽しそうに笑った郁人くんは、機嫌の悪い茜くんと私を残して先に行ってしまった。
人気のない廊下で、ふたりきり。
それはものすごく嬉しくて幸せで、憧れのシチュエーションだ。
茜くんが怒ってさえいなければ。
……なんで?
なんで不機嫌なのかわからない。
私の変化に気づいてくれなくてヘコんでるのは私のほうなんですけど。
どうでもいい用事で会いに来たから?
面倒だったから?
でもそんなのいつもだし……積もり積もったイライラがついに爆発したとか?
ぐるぐると考えていても答えが出なくて、茜くんを恐る恐る見つめる。
「……お前、誰にでもあんな風に触られるの」
低い声で。不機嫌な顔で。
聞かれた質問が予想外で、え、と聞き返す。
そっと、怒っている顔とは裏腹に。
丁寧に、優しく。
私の髪に触れる茜くん。
「っ…」
微かに頬をかすめた茜くんの指に、ドキドキしてぎゅっと目を閉じる。
触れたところが、信じられないくらい熱い。