【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
突然、俺の服の袖を、花染静香が掴んできた。
「……っ」
心配したような瞳で、俺を見上げるように、見つめてくる彼女。
上目遣いになっているのは、きっと計算に違いない。
だから……惑わされるなって、俺……っ。
「……なんですか?離してください」
「ま、待ってください……少し、ここに座っててください……!」
「……は?」
「絆創膏だけでも貼らせてください」
「ちょっ……、っ!」
急いで絆創膏を取ってきたらしい彼女が、俺の首に触れた。
異様なくらいその箇所に熱が集まって、俺は今きっと情けないくらい赤くなっているだろう。
幾ら何でも、平然と触りすぎじゃないか……?
足とか手とかならわかるけど、男の首なんて簡単に触って、しかも、顔近いし……
「……やっぱり慣れてますね、こういうの」
この女の行動全てが、計算高く感じて、言葉にできない怒りが湧き上がった。
俺のこと、からかってんのかな……?
俺の反応見て、楽しんでんの?