【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
ど、どうして、私……


……和泉くんに、抱きしめ、られてるの……!



「あ、あの……っ……」



上手く声が出なくて、ただすぐ近くにある和泉くんの顔を見つめる。

落ちた私を受け止めてくれた和泉くんは、迷惑そうに溜息を吐いた。


暖かい腕の中で、思考が、完全に停止する。



「ご、めんなさ……」



あからさまに嫌そうな顔をして私を見つめている和泉くんに気づいて、慌てて彼から離れた。


当たり、前だ。


和泉くんの前でこんなドジをしてしまうなんて、最悪だ……。


気まずい沈黙が、流れる。



「…………大丈夫、ですか?」



それを破ったのは、和泉くんの、低い声だった。

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