【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
俺が、この女のことーー……
「誰にでもこういうことするんですか?計算も、ここまでいくと詐欺でしょ?」
ーー気になって仕方ないって、見透かされている気がした。
馬鹿にされているみたいで、腹が立った。
「……あの、どういう、意味ですか?」
「そうやって男誑かせて、楽しいですか?」
「たぶら、かす?」
「何惚けてるんですか?……ほんと、虫唾が走る。そんな顔したって、俺は騙されませんから」
言い出したら、もう止まらなかった。
「先輩みたいな軽そうな女、俺嫌いなんですよ」
言いすぎた、と、後悔したのは、彼女の傷ついた顔を見た後。
けれど謝る気にもなれなくて、
「それじゃあ、もう関わることもないと思いますけど」
図書室を飛び出して、早足で廊下を歩く。
……幾ら何でも、言い過ぎた……。
軽い女が嫌いだっていうのも、あの女の行動に腹が立ったのも本当だけど、でも……あんなこと、言いたかったわけじゃない。
ただ、振り回されている自分を嘲笑われている気がして……
「ガキかよ、俺……」
一目惚れだったんだ。
自分でも、気付いていた。
あの日、花壇で彼女を見かけたあの瞬間。
俺の心は、あっさりと奪われた。