【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
そういや、結局本借りられなかったな……
まぁ、またあの女がいない時にでも、行こう……。
そんなことを考えながら、ちらりと佐倉先輩の方を見た俺は、ある違和感に気付いた。
「佐倉先輩、なんか機嫌良くないですか?」
いつも一定のテンションを保っている佐倉先輩だからこそ、感じられた違和感だと思う。
少し浮き足立っているように見えたというか……とにかく、機嫌が良いことだけはわかった。
「え?そう?」
俺の言葉に、佐倉先輩は何やら恥ずかしそうに頭を掻いた。
「……うん、まあそうかも。さっき凄い可愛いもの見つけちゃったから」
……可愛い、もの?
「なんすかそれ」
野良猫でも見かけたのか……?
変な言い方に引っかかったが、どうでもいいやという気持ちが勝った。
けれど、この時の台詞の意味を、俺は後に知ることとなる。
夏休み後半に行われる合宿。
その説明会が視聴覚室で行われる為、部員が集められた。