【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
密かに楽しみにしている合宿。一週間サッカー漬けなんて、楽しいに決まってる。
もうすでに部員の殆どが揃っていて、後はキャプテンが来れば説明会が始まる……という時だった。
視聴覚室の後ろの扉が開いて、何故か部員の視線がそこに集中する。
瞬く間にざわつきが室内に駆け渡って、俺もその方向を見た。
……っ、なんで……?
花染静香が、ここにいんの……?
この場にいる誰もが、場違いすぎる人間の登場に戸惑っていた。
気にしないようにしようと思っていたのに、席が他に開いておらず、俺の隣に座った彼女。
気まずすぎて、俺はあからさまに彼女から顔を背けた。
向こうも、もう俺とは関わりたくないって、思ってるだろうな……。
だって俺は、図書室で自分でも酷いと思う言葉を彼女に投げつけた。
あんなこと言われて、さぞ怒ってるだろう……と、思っていたのに。