【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「退いてくれません?」
「あっ……ごめん、なさい……」
何か言いたげな彼女に、低い声でそう告げた。
「和泉、くん……?」
「気安く名前、呼ばないでください」
先輩の、彼女のくせに……俺のことなんて、放っておいて。
「必要最低限以外の会話、禁止されてるんでしょ?」
こんな、子供みたいな拗ね方……かっこ悪すぎる。
そうはわかっていても、今は優しくなんて出来なかった。
もう、彼女には関わらない。
このどうしようもない感情ごと、全部捨ててやる。
そう決意しながら、俺の頭の中には、去り際に見えた彼女の泣きそうな顔が媚びりついていた。
【side 和泉】-END-