【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
ど、どうしよう……こんな近くに、和泉くんがいる……っ。
顔が熱くって、きっと今、情けないくらい赤くなってるだろう。
「は、はいっ……ごめんなさい、助けてくれて、ありがとう、ございます……」
頭を下げて、お礼を言った。
心臓が、病気かと思うくらい早く鼓動を打っている。
「……怪我が無いなら、よかったです」
和泉くんはそう言って、図書室の奥へと歩いて行った。
…………はぁっ……。
聞こえないように、大きく息を吐いて、吸い込む。
事故とはいえ、和泉くんに、触れてしまった……
もう、心臓がどうにかなっちゃいそう……。
一体何を借りに来たのか、こっそり和泉くんの方を見ると、熱心に本を吟味していた。