【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「静香」
「?」
「母さんも言っていたけど、気をつけるんだぞ。高校生の男なんて、変なことしか考えてないからな」
「変なこと……?」
「ぐっ……お前のピュアさが憎いよ……!」
お兄ちゃん……?
何故か額を押さえて苦しみ始めたお兄ちゃんに、目を瞬かせる。
だ、大丈夫、かな……?
心配だったけれど、どうやら収まったらしく、お兄ちゃんはふぅ……と大きく息を吐いた。
「とにかく、何かあればすぐに連絡すること。わかったか?」
「はいっ」
「よし」
私の返事に納得したらしいお兄ちゃんは、車の窓から顔を出し、私に手招きした。
いつもの合図。
顔を近づけると、お兄ちゃんが私の頰にキスをする。
「いってらっしゃい、静香」
満足気に微笑んだお兄ちゃんに、私も笑顔を返した。