【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「行ってきます」
車を発進させ、去ってしまったお兄ちゃん。
私もキャリーバックを持って、待ち合わせ場所である体育館に向かいながら、先ほどキスをされた頰に手を添えた。
海外から帰って来てからだよね……やっぱり、向こうではキスは挨拶なのかな?
相手はお兄ちゃんだし、特になんとも思わないけれど、私には考えられない世界だなぁと思った。
海外でなんて、暮らせる気がしない……。
体育館に着くと、すでにちらほらと部員さんたちが集まっていた。
その中に、佐倉先輩の姿も。
「静香ちゃん!おはよ」
すぐに私に気づいて、佐倉先輩が駆け寄って来てくれる。
「おはようございます」
ぺこりと頭を下げると、笑顔を向けられた。
朝から、爽やかだなぁ……佐倉先輩。