【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「あ、あのっ……」
突然だった。
佐倉先輩が、私の肩に頭を預けてきたのは。
「……ダメ?」
眉の端を垂らして、懇願するように聞いてきた佐倉先輩。
「……だ、ダメでは、無いです……」
そう言うと、先輩は嬉しそうに笑った。
お兄ちゃんが良くこうしてくるから、別に嫌では無い。
相当眠たかったんだろうな……バスは寝にくいだろうし、私の肩で役に立つなら……。
「静香ちゃん、良い匂いする……」
え?
良い、匂い?
自分の匂いなんて気にしたことがなかったから、気に入らない匂いを漂わせていたらどうしようと心配になった。
「花の……落ち着く匂い……」
……佐倉、先輩?
スー、スー、と規則正しい寝息が聞こえて、驚いた。