【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
……っ。
私の視界に、身を挺して庇ってくれた和泉くんの姿が映った。
「……い、ずみ、くん……」
「……どうして、俺の名前知ってるんですか?」
眉を顰めた和泉くんに、どきりとする。
そ、れは……って、それどころじゃない……。
「ごめんなさい、私……」
「案外ドジなんですね……って、もしかして計算ですか?」
「……え?」
「……いや、何にもありません」
……計算、って、言った?
……何のだろう?
不思議に思って和泉くんを見つめると、私はその首から、少し血が出ているのが見えた。
落ちてきた本で切れたのだろう。
……大変……!
「あ、あの、怪我してますっ……」
「え?」
「首の、ところ……!」
「……ああ、別に平気です。痛くもないですし」