【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
なんて、和泉くんにとっては迷惑極まりないだろう気持ちを再確認して、私も本を片付ける。
「……それじゃあ、俺もう行きます」
直し終わったと同時に、図書室から出て行こうとした和泉くんの手を、咄嗟に掴んだ。
「……っ。……なんですか?離してください」
「ま、待ってください……少し、ここに座っててください……!」
「……は?」
怪訝そうに私を見る和泉くんの返事も聞かずに、カウンターへ戻った。
カバンの中から絆創膏を取って、和泉くんの元に戻る。
「絆創膏だけでも貼らせてください」
「ちょっ……、っ!」
身を捩って後ろへ下がる和泉くんに負けじと、私はその首に手を伸ばした。
怪我をさせてしまったまま、帰せない……。
そっと絆創膏を貼って、首に馴染ませた。