【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
健太くんたちは、一度合宿に来たことがあったのかぁ……。
それにしても、リナちゃんらしいな……ふふっ。
「荷物持ち4人もいますし、余裕ですよ!な、和泉!」
再び、びくりとあからさまに反応してしまった。
和泉くんに同意を求めた健太くんは、笑顔で後ろを振り返っている。
「……はい」
背後から、短い返事が聞こえた。
和泉くんは、歩く足を速め、スタスタと私たちを追い越していく。
先に行ってしまった和泉くんの背中を見ながら、私は少しほっとしてしまった。
これ以上近くにいたら、気まずくてどうにかなっちゃいそうだったから。
それにしても……やっぱり和泉くん、風邪でも引いてる……?
どうしても、彼から漂うオーラがいつもとは違う違和感が、拭えなかった。
近くにいてより一層感じたそれが、確信に変わっていく。
足早に歩いていくその背中も、いつもより覇気がないように感じられた。