【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「……はい、これで大丈夫、です」
「……」
「……助けてくださって、ありがとうございました……」
ちゃんと目を見てお礼を言って、頭を下げた。
これ以上見つめちゃったら目がどうにかなってしまいそうな気がして、視線を逸らす。
何故か黙り込んでしまった和泉くんは、ゆっくりと立ち上がって、私を見下ろした。
「……やっぱり慣れてますね、こういうの」
図書室に響いた、和泉くんの低すぎる声。
ーーえ?
和泉くんの方を見ると、私のことを軽蔑するような目で見ていた。
その目が怖くて、思わず一歩後ずさる。
「誰にでもこういうことするんですか?計算も、ここまでいくと詐欺でしょ?」
和泉、くん……?