【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「和泉くん、立てますか……?」
俺の顔を覗き込んだのは、さっき唯一俺の異変に気付いた彼女だった。
「……な、んで……あんた……」
どうして、あんたなの?
どうしてあんたが……俺を見つけてくれるんだ……っ。
「ひとりで立てそうになかったら、他の人呼んできますねっ……?少しだけ、待っててください……!」
静香先輩は、そう言ってグラウンドに戻って行こうとした。
最後の力を振り絞り、俺はその細い手を掴んだ。
自分の方へ引き寄せて、華奢なカラダを抱きしめる。
お願いだから……ここにいて。
「……か、ないで……」
どこにも行かないで。
今だけでいいから……俺のそばにいて。