【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「わかる。風邪移されても困るしー。出来れば佐倉先輩ともお近づきになりたいじゃん?」
「和泉くんは目の保養だけど、寝てたら意味ないよね。話せないし、顔も覚えてもらえないしー」
「ほんとそれ。寝てる時に看病したって、感謝される訳でもないし。ボランティアとか勘弁」
「目覚ましてちょっと元気になった頃に行こっかなぁ〜」
「それズルいしー!あたしも行くー!」
「弱ってる間に優しくしたら、あの和泉くんでもコロッと堕ちてくれるかもよ?」
ケラケラと面白そうに笑っている女の子たちの会話に、酷く胸が痛む。
無性に泣きたくなって、私はその場から逃げるように走った。
女の子たちに、腹が立った訳じゃない。
考え方は人それぞれだし、人の意見にとやかく言うほど、私は偉い人間ではないから。