【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
ただ……和泉くんが……
可哀想、で……っ。
和泉くんの気持ちを考えると、涙が一筋、私の頬にシミを作った。
どう、しよう……
あの子たち、きっとあのまま、行かないつもりだ……。
だとしたら、和泉くんはあのままひとりで……、それ以前に、さっき私たちが出て行ってからもしかしてずっとひとりでいたの、かな……?
氷タオルを替えたり、こまめに水分補給を勧めたりしないと、風邪も良くならないだろう。
むしろ、悪化しちゃう……。
健太くんに頼もうかな……いや、健太くんは他の仕事があるだろうし、忙しいか……。
それに、もし健太くんにお願いしたら、さっきのマネージャーさんたちが看病をしてくれないと告げ口しているようなもの。
頭をフル回転させ、いろんなことを考えている時、前から歩いてくる人影が見えた。