【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
少し苦しそうな、呻きにも似た声が室内に響く。
慌てて和泉くんの方を見ると、先ほどまで固く閉ざされていた瞼が、薄っすらと開かれていた。
やってしまった……っ、と、心の中で叫ぶ。
ゆっくりと開かれてゆく和泉くんの瞳がこちらを向いて、バッチリ目が合ってしまった。
ど、どうし、ようっ……。
ここは……
「す、すみません……!失礼しました……!」
……に、逃げよう……!
慌てて立ち上がろうとしたけれど、腕に走った熱の感触。
……え?
和泉くんの手が、弱々しい力で私の腕を掴んだ。
どうしてそんなことになっているかわからなくて、私はその体勢のまま固まる。