【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
腕……握られた……っ。
あれは、なんだったんだろう……
私を引き留めたのは、お礼を言う、ため……?
でも、直ぐに不機嫌になっていたし……
和泉くんの行動の意図は読み取れないけれど、少しでも話せたことが、嬉しい。
こんなことで喜んで、舞い上がってしまう気持ちを制御出来ない。
ダメだ……私、ほんとに……。
全然、忘れられてないっ……。
心臓の高鳴りが治らなくて、少しの間まぶたをぎゅっと瞑った。
お願いだから、ドキドキしないで……っ。
「しっかり、しなきゃ……」
そう、私はお手伝いに来たんだから……!
和泉くんが風邪で辛そうな時に、少し喋ってもらえたくらいで浮かれるなんて不謹慎だよ……。
カツを入れ直すため、頰をパチっと叩いた。