【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「…………そう、ですか」
心底安心しているような和泉くんの姿に、誤解が解けたのだと、私も安堵の息を吐く。
和泉くん……こんなにホッとしてるなんて、よっぽど佐倉先輩のこと尊敬してるのかな……
だからきっと、憧れの佐倉先輩が私みたいなのと付き合ってないってわかって、安心したんだろう。
とにかく、誤解が解けてよかった。
私は手持ち無沙汰になっていた手で再びお粥の入ったお皿を持ち、和泉くんの顔を覗く。
「た、食べますか?」
「はい……」
さっきより、心なしか声色も柔らかくなった和泉くんは、こくりと頷いた。
さっき話していた間に、ちょうど食べやすい温度まで冷めただろうおかゆを少しすくう。
「どうぞ」
和泉くんの前に差し出すと、一瞬躊躇った後、ぱくりと口に入れてくれた。