【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
もぐもぐと口を動かす姿がなんだか可愛くて、見つめてしまう。
「……美味しい」
ボソリと呟かれた言葉に、私は万歳してしまいたいほど嬉しくなった。
よかった……。
「おかゆなんて、初めて食べました……」
……え?
「……風邪の時とか、食べませんでした……?」
「……風邪引いても、誰も家に居なかったんで……」
そんな……。
風邪の時に、そばにいてくれる人がいないなんて、きっと凄く辛い。
私はいつも、看病してくれる人がいたから体感したことはないけれど……和泉くんの気持ちを考えると、胸が苦しくなった。
そういえば……さっき佐倉先輩が、和泉くんの両親は迎えに来ないと言っていた。
和泉くんは、ご両親と仲が良くないの、かな……?