【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
掛けるセリフが出てこなくて、言葉に詰まる。
だって……家族に恵まれている私が何を言ったって、なんの説得力も無い。
同情なんてする資格も無ければ、和泉くんだって、されるのは嫌なはずだ。
ただ、悲しかった。
和泉くんが寂しそうに見えて、胸が痛かった。
「……なんであなたが、そんな顔、するんですか……」
……っ。
「ご、ごめんなさいっ……」
どんな顔をしていたかはわからないけど、きっと情けない顔をしていたに違いない。
私は誤魔化すように髪を触って、和泉くんの顔色を伺った。
私、また機嫌を損ねさせちゃったかな……っ。
そう思って焦ったけれど、どうやらそんなことは無いらしい。