【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「え?お前浮気したの?うわ、ひっでー」
ちょっと待って……別れた原因って、浮気だったの……?
リナちゃんが言いたくなさそうだったから聞かなかったけど……そんな……
……酷いっ……。
「だってリナうるせーんだもん。部活があるからデートも無理とか、つーか部活中は俺のこと他の部員と同じ扱いなんだぞ?ちょっとくらいは特別扱いしてくれていいじゃん」
追い討ちをかけるように聞こえてきたその声には、聞き覚えがあった。
間違いなく、ケンくんの声だ。
「最近彼女じゃなくてオカンっぽかったんだよあいつ。終いには俺が浮気しても『じゃあ別れよっか』だけだぞ?ほんと可愛げねーわあいつ」
ケンくんが吐き出す言葉の一つ一つが、私の胸に突き刺さる。
言葉に出来ない怒りが胸の奥から湧き上がって、自分の手をぎゅっと握りしめた。
……こんな人だなんて、思わなかった。